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エキスパートが解説する Dr.コラム

新型コロナとの付き合い方
~WITHコロナ生活~(Vol.2)

令和5(2023)年、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が「5類感染症」になりました。それはあらたな"WITHコロナ生活"の始まりともいえます。本コラム後編では、WITHコロナ生活におけるこれからの感染対策のあり方について考えてみたいと思います。
前編では、なぜ新型コロナの位置づけが変わったのか、そもそも新型コロナとはどのような感染症であるのかおさらいしました。

これからの感染対策はどうすればいい?

 まず、これからの感染対策を考える前提となるのが、「新型コロナの流行は今後も起こり、高齢者や基礎疾患のある人は重症化する可能性がある」ということです。しかし、5類になったことで、行政が感染対策について具体的な要請・関与をすることはなくなりました。政府も「個人や事業主の判断にゆだねる」と発表しているように、私たちは自分自身で考え、判断していく必要があるのです。
 ただ、政府も私たちにゆだねっぱなしではなく、これからの感染対策に関する「基本的な考え方」を示しています(図)。たとえば、手洗いなどの手指衛生、換気、3密回避、人と人との距離の確保について、政府は、「一律に求めない」けれども「引き続き有効」としています。

5類感染症移行後の感染対策の基本的な考え方

5類感染症移行後の感染対策の基本的な考え方

厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について
https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html(2023年12月20日参照)

マスクをつける?つけない?

 マスク着用については、5類移行に先立ち、すでに2023年3月13日から「個人の判断にゆだねる」となっています。マスク着用は人により考え方が分かれるところで、同じようにマスクをつけていても「ぜったい必要」と考えている人、「いつ外せるのか」と周囲の状況をうかがっている人、さまざまだと思います。
 そこで参考にして欲しいのが、マスク着用とは、自分を守るだけでなく、周りに感染を広げないための行動であること、そして場面や状況に応じて「つける・つけない」を判断する、という考え方です。
 では、どのような場面でマスクをつければ良いかですが、それは病院の中や高齢者施設、混雑した公共交通機関を利用するときです。このような場面では、高齢者などの重症化リスクの高い人への感染を防ぐため、マスクをつけることが推奨されます。
 逆に、流行状況が落ちつき、周囲に重症化リスクの高い人がいないときなどは、マスクを外しやすいタイミングといえます。屋外も、人が密集した環境でなければマスクを外して問題ないでしょう。このように柔軟かつ適切な「つける・つけない」の判断が、これからは求められていると思います。

新型コロナに感染したかもしれないときは?

 新型コロナに感染した場合、2類相当時は行政(保健所)による健康観察があり、宿泊療養、入院などの指示を受けることができました。5類になってからは個人で判断・行動することとなり、いざ発熱したとき、どう対応すれば良いか迷う人もいるでしょう。
 まず、若く健康な人は、重症化は稀であることから、あわてる必要はありません。薬局で検査キット(「体外診断用医薬品」または「第一類医薬品」の表示があるもの)を購入してみずから検査を行い、症状が軽ければ自宅などで療養してください。症状が重くなったときは、かかりつけ医など近隣のクリニックを受診すると良いでしょう。一方、高齢者や基礎疾患のある人は、重症化を予防すべく、できるだけ早く医療機関を受診してください。
 同時に、周囲に感染を広げない配慮も必要です。5類になって以前のような外出自粛要請はなくなりましたが、感染者は、周囲の人に感染させる量のウイルスを排出しています。そのため政府も、発症の翌日から5日間は自主的に外出を控えるよう推奨しています。さらに10日間はウイルス排出の可能性があるため、重症化リスクの高い人との接触を控え、マスクをつける心がけが必要です。

ワクチン接種は今後どうなる?

 新型コロナワクチンの登場は、パンデミックの混乱の中、希望の光となるできごとでした。従来、ワクチンの開発には10年単位の年月を要するところ、新型コロナでは流行が始まって1年以内にワクチン接種が始まり、世界中が驚いたものです。
 この新型コロナワクチンは、従来のワクチンとは異なるmRNAという仕組みを採用したことで、変異株にも迅速に対応できる点が特徴です。それにより令和5(2023)年9月からは、オミクロン株の亜系統「XBB」に対応するワクチン接種もスタートしています。
 多い人では7回目の接種となる中、「新型コロナワクチンは、いつまで接種すれば良いのか」と考える人がいるかもしれません。私の考えとしては、「重症化リスクの高い人は今後も接種すべき」です。
 高齢者や基礎疾患のある人などは、重症化予防を目的として、ひきつづき新型コロナワクチンを接種する意義があると思います。政府も、令和6年度(2024年度)以降は対象を65歳以上の高齢者等の重症化リスクの高い方(インフルエンザワクチンと同様の対象者)として、重症化予防を目的に、新型コロナ感染症を予防接種法上のB類疾病とし、法に基づく定期接種として実施予定です。
 一方、若く健康な人で年1回接種が必要かどうかは、生活環境などその人の状況に応じて判断すると良いでしょう。たとえば高齢で持病のある祖父母と同居している場合などは、ワクチン接種により、同居家族への感染リスクを下げることが期待できると思います。

インフルエンザワクチンとの同時接種もできる?

 例年冬になると、季節性インフルエンザが流行するシーズンを迎えます。そこで、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種しても良いかが気になるところです。
 基本的に同時接種は、単独で接種した場合とくらべ、有効性・安全性のいずれも劣らないことが報告されています(第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 2022(令和4)年7月22日https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000968057.pdf)。これらのデータをもって現在は同時接種が可能であり、それぞれを別の日に接種する場合も、接種間隔について特に制限はありません。
 なお、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチン以外のワクチンについては、安全性に関する十分なデータがなく、同時接種ができない点にご留意ください。

WITHコロナ生活に必要なことは?

 最後に、新型コロナのこれまでを振りかえり、今後の課題についても触れておきたいと思います。
 まず、新型コロナに対するワクチンの登場は人類にとって大きなできごとであり、開発に貢献した研究者は2023年ノーベル生理学・医学賞の受賞者となりました。しかし、現在の新型コロナワクチンも、けっして完璧なものではありません。副反応の多さや、ウイルスの変異あるいは時間経過によって感染予防効果が落ちるといった問題がありますので、今後も、より副作用が少なく、ウイルスの変異にも対応でき効果が長続きするワクチンの開発がのぞまれます。
 また、次のパンデミックに備えた対策も必要です。現在、日本では感染症の危機に対し、都道府県と医療機関が協定を結び、必要な病床を確保する計画が進んでいます。しかし、新型コロナで経験したように、感染症のパンデミックでは通常の医療よりも多くの人員が必要です。病床が整っても、医療従事者が不足している限り十分な医療は提供できません。今後、きたるべきパンデミックに備え、感染症専門医のような専門家を育成し、増やしていけるよう、日本の医療の仕組みそのものを見直していくことも必要でしょう。
 そして私たちが個人レベルでできるのは、新型コロナの経験をムダにしないことです。一人ひとりが生活の中で、これまでの感染対策で学んだことを記憶しながら、次世代に受け継いでいく必要があります。感染症が消滅することはなく、パンデミック対策は大きな課題ですが、一人ひとりの考え方や行動によって、社会全体で少しずつ良い方向に進んでいけるのではないかと思います。

これからのWITHコロナ生活に必要なこと

WITHコロナ生活に必要なことは?
忽那賢志 先生
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忽那 賢志 先生

kutsuna satoshi

PROFILE

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。